筋力トレーニングの実施にあたって、筋肉の名称や構造、そしてその働きについて理解したほうがよいでしょう。ここでは、各部位別の名称の説明から筋肉の種類やその形状に関して解説していきます。
部位別の筋肉の名称とその働きについて
人体は、およそ200の骨と400の筋肉で構成されています。筋力トレーニングにおいては、からだの中でも比較的大きい筋肉や、各部位の代表的な筋肉が、強化の主なターゲットとなります。ここでは、各部位別に筋肉を解説していきます。
顔の筋肉
顔の筋肉を主に表情をつかさどる為に使用される筋肉となります。表情においても筋力トレーニングすることで、顔面のたるみを防止することができます。顔の筋肉は以下のような種類があります。
- 浅頭筋
- 耳介筋
- 眼瞼筋
- 鼻筋筋
- 口筋
- 咀嚼筋
- 頭筋膜
首の筋肉
首の筋肉は、小さな様々な筋肉が合わさって構成されています。有名な筋肉としては胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉であり、首の太さにかかわる重要な要素です。首の筋肉としては以下の種類があります。
- 胸鎖乳突筋
- 広顎筋
- 前斜角筋
- 中斜角筋
- 後斜角筋
- 最小斜角筋
- 前頭直筋
- 頭長筋
- 頸長筋
- 外側頭直筋
胸の筋肉
胸の筋肉は大胸筋・小胸筋・前鋸筋(ぜんきょきん)の3つの筋肉を中心に存在しています。
他の種類としては以下の筋肉が挙げられます。
- 外肋間筋
- 内肋間筋
- 肋下筋
- 長肋骨挙筋
- 短肋骨挙筋
- 胸横筋
胸の筋肉を鍛える方法としては、ベンチプレスやダンベルフライ、プッシュアップなどの筋力トレーニングで鍛えることができます。
背中の筋肉
背中の筋肉は足の筋肉に次いで大きな筋肉と言われています。そのため、背中の筋肉を大きくすることで基礎代謝が上がりダイエット効果があるといえるでしょう。
その背中の筋肉として有名な筋肉は、広背筋と僧帽筋、そして脊柱起立筋群です。脊柱起立筋群は腸肋筋・最長筋・多裂筋・脊柱起立筋によって構成されています。それ以外の小さな筋肉群としては以下が挙げられます。
- 小菱形筋
- 大菱形筋
- 肩甲挙筋
- 棘肋筋
- 上後鋸筋
- 下後鋸筋
- 頭板状筋
- 頸板状筋
- 胸棘筋
- 頸棘筋
- 頭棘筋
- 半棘筋
- 多裂筋
- 回旋筋
- 短背筋
- 後頭下筋
広背筋と僧帽筋は、懸垂やダンベルロー、シーテッドロー、ラットプルダウンなど物を引く動作を行う挙動で鍛えることができます。
脊柱起立筋群は、背筋と呼ばれるバックエクステンションやデッドリフトで鍛えることができます。
肩の筋肉
肩の筋肉は、三角筋とその周辺筋であるローテーターカフに分けられます。ローテーターカフとは、棘上筋と棘下筋と小円筋と肩甲下筋のことを指し、肩関節の複雑な動きを実現させるために存在しています。
肩幅を大きくみせたい場合は、三角筋を鍛えると良いでしょう。三角筋を鍛える際は、ショルダープレス・サイドレイズ・フロントレイズを行ってください。但し、肩の筋トレは小さい筋肉であるのと、単関節トレーニングとなる為、トレーニングの最後のほうに取り入れるようにしてください。
腕の筋肉
腕の筋肉は、上腕二頭筋・上腕三頭筋・前腕筋群の三種類に分けられます。上腕二頭筋はいわゆる力こぶのことで、その反対面に存在している筋肉が三頭筋です。
前腕筋群は、約20程の筋肉が合わさって出来ています。その筋肉とは以下の通りとなります。
- 円回内筋
- 橈側手根屈筋
- 長掌筋
- 尺側手根屈筋
- 浅指屈筋
- 深指屈筋
- 長母指屈筋
- 方形回内筋
- 腕橈骨筋
- 長橈側手根伸筋
- 短橈側手根伸筋
- 回外筋
- 尺側手根伸筋
- 総指伸筋
- 小指伸筋
- 示指伸筋
- 長母指伸筋
- 短母指伸筋
- 長母指外転筋
上腕二頭筋を鍛えるには、バーベルカールやコンセントレーションカールがおすすめです。
上腕三頭筋を鍛えるときは、トライセプスプレスダウンを行うようにしましょう。
前腕筋群を鍛える際は、リストカールやリストエクステンションをしましょう。
腹の筋肉
お腹の筋肉には、割れた腹筋の代名詞シックスパックの主たる筋肉である「腹直筋」とその周辺に存在する外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋があります。
腹直筋は体幹を曲げる挙動をする際に使用され、それ以外の腹斜筋群は体をひねる挙動を使用するときに使います。
腹部の筋肉を鍛える際は、シットアップ・クランチなどが良いでしょう。
お尻の筋肉
お尻の筋肉は、お尻部分の筋肉群と股関節周辺の筋肉群に大きく分けることができます。
お尻部分の筋肉群は、大臀筋・中臀筋・小臀筋があります。
股関節周辺の筋肉群は以下の通りです。
- 大腰筋
- 小腰筋
- 腸骨筋
- 大内転筋
- 長内転筋
- 短内転筋
お尻をリフトアップしたい場合は、スクワットやスティッフレッグドデッドリフトを行うと良いでしょう。
脚部の筋肉
脚部の筋肉は、上腿部の大腿四頭筋とハムストリング並びに下腿部の腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋が挙げられます。
大腿四頭筋は、太ももの上の筋肉であり、レッグプレスやレッグエクステンションで鍛えることができます。
ハムストリングは、大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋が集まった筋肉のことを指し、太ももの裏を指します。ハムストリングはレッグカール・スティッフレッグドデッドで鍛えることができます。
下腿部の腓腹筋・ヒラメ筋は、男らしい脚を見せるためには重要な筋肉です。腓腹筋・ヒラメ筋はステップアップやカーフレイズを行うことで鍛えることができます。
筋肉の種類とその働きについて
筋肉の形状
筋肉の形状は、各部位やその働きによって異なっています。肘を曲げたときにできる力こぶで知られる「上腕二頭筋」は、繊維が縦方向に配列し、外見が糸巻のような形状をしていることから「平行筋」または「紡錘状筋」と呼ばれています。
また、この筋は2つに分かれていることから「2頭筋」にも分類されます。
太ももの前側の大腿四頭筋は、鳥の羽根のように線維が斜め方向に分布した形状となっており「羽状筋」とよばあれます。また、腹筋は割れているようにみえますが、じつは「腱画」によって仕切られた形状となっているためであり、「多膜筋」と呼ばれています。
アウターマッスルとインナーマッスル
筋肉には、からだの表面に分布する「表層筋群」いわゆるアウターマッスルと、からだの表面からは見えない内側に分布する「深層筋群」いわゆるインナーマッスルとがあります。アウターマッスルは、からだの主要な動作において大きな力を発揮する原動力としての役割をはたしますが、インナーマッスルは主に動作中に関節の回転軸を安定させたり、姿勢を一定に保ったりする働きを担っています。筋力トレーニンにおいては、アウターマッスルを強化するばかりではなく、正しい動作の習得やスポーツ障害の予防を目的としてインナーマッスルの強化を行うことも大切です。
筋肉の内部とその働きについて
筋肉の内部構造と収縮の仕組み
筋肉は、数百から数十万の筋繊維で構成されています。筋線維は筋周膜によって束ねられており、これを「筋束」と呼んでいます。筋線維は、髪の毛と同じくらいの太さで、直径が20~150ミクロンの組織です。筋線維の周囲には、脳やせき髄からの命令を送る神経や、酵素と栄養を運ぶ血管が分布しています。筋線維は、直径1ミクロン程度の筋原線維の束で構成されており、内部には、アクチンとミオシンと呼ばれる部分があって、これらが互いに内側にすべりむことによって、筋肉の収縮が起こる仕組みになっています。
筋線維の種類
筋線維はその性質によって、収縮速度は速いが疲労しやすい「速筋繊維」と「遅筋線維」の二つに分類することができます。またこれらの中間的性質を持つ筋線維として「FOG線維」と呼ばれるものが知られています。
各種筋線維の数の割合は遺伝によってほぼ決定されています。このため、陸上短距離のような瞬発型・パワー型協議の選手の場合には、速筋繊維が多く、陸上長距離のような持久力型協議の選手の場合には、遅筋線維が多いことが知られています。
強度の低い運動では、主として遅筋線維が動員されますが、強度が高くなるにつれて速筋繊維も動員されるようになります。したがって、高負荷を用いた筋力トレーニングは、遅筋線維に加えて速筋繊維が十分に動員される運動であるといえます。
また、加齢によって、速筋繊維が選択的に衰えることが知られており、高齢者がすばやい動きを苦手とする要因となっているといわれています。筋力トレーニングは、このような速筋繊維の萎縮を防ぐためにも有効とされています。
なお、中~高負荷を用いた短い休息時間で追い込む、筋肥大を目的とした筋力トレーニングを実施した場合には、速筋繊維の有酸素的能力が高まり、中間型に変化することが知られています。