筋肥大とは筋力トレーニングによって、筋肉を太くしたり、筋力量を増やしたりすることです。その効果としては見栄えの良い体をつくるだけではなく、代謝を高めて太りにくいからだに変えたり、生活習慣病を予防したりするためにも役立ちます。また、筋力トレーニングによる筋肥大の効果は、スポーツ選手が競技にひつような筋力量を短期間に効率よく獲得するためにも重要であり、大きな筋力やパワーを発揮するための基盤にはもなります。その筋肥大のメカニズムを徹底解説していきます。
筋肥大はどの部位で起こっているのか?
筋肉の太さや量は、各部位のサイズをメジャーで測ったり、体重と体脂肪率から「除脂肪体重」と呼ばれる脂肪を除いた体重を算出したりすることによってある程度把握することができます。
筋トレによる筋肥大は、主として筋繊維の一本一本が太くなることによっておこります。これ以外には、筋繊維の数の増加(いわゆる、筋繊維の増殖)や、筋繊維以外の結合組織の増大(主にコラーゲンなど)が筋肥大の要因として考えられています。
筋肥大を生じさせるためのトレーニングとは?
基本的に筋肥大のためには、トレーニングによって筋肉に一定以上の負荷刺激を加え、強く活動させることが必要です。
筋肉に負荷刺激が加わることによって、次項で述べる成長ホルモンの分泌とともに「成長因子」と呼ばれる物質(インスリン)が肝臓や筋繊維内で放出され、食事でとったたんぱく質を筋肉に同化する作用がたまったり、サテライト細胞と呼ばれる筋肉を大きくする作用を持つ細胞が活動を開始したりすることで、筋肥大が起こると考えられています。
筋肥大のためには、少なくとも1回持ち上げれる最大のウェイトの70%以上の負荷(12回以下しか繰り返しすることができない負荷)をもちいることが大切となってきます。このレベルの負荷を用いることによって、筋肥大しやすい速筋繊維を十分に動員する効果も期待できます。
パンプアップと成長ホルモンの作用
筋力トレーニングを行うと、筋肉がパンパンに張って膨張したような感覚がおこり、筋肉のサイズが一時的に増加します。このような状態は、一般的に「パンプアップ」と呼ばれています。
トレーニングによって、筋肉内の毛細血管が開いて血液が大量に流れ込むとともに、筋肉が一時的な低酸素状態となり、筋肉内に乳酸をはじめとする各種代謝産物が蓄積します。このような状態になると、代謝産物を除去したり、薄めたりするために浸透圧の働きによって筋肉内に水分が入り込み、結果として筋肉が膨張した状態になると考えられています。このような「パンプアップ」が起こるレベルまで追い込んだトレーニングを行うと、トレーニング後に成長ホルモンが多量に分泌され、これらが筋肉の合成を促進する役割を果たすと考えれています。
パンプアップを起こすためには、10回前後の反復回数で限界に達するようなトレーニングを一分以内の短い休息時間で行うことが有効です。また、加速をつけずにゆっくりとした一定スピードで休みなく動作をおこなうことも効果的です。
トレーニングの動作範囲全体を通じて筋肉の収縮を常に保つことができるため、筋肉内の欠陥を圧迫することで、血液を一時的に制限し低酸素状態にすることでパンプアップを促進する効果が期待できます。
筋肉は損傷してから回復する過程で大きくなる
筋トレによって、筋肉に微細な損傷が起こると損傷した部位を修復する働きが活発になり、たんぱく質の合成レベルが高くなります。通常、2~3日程で損傷部位は回復しますが、環境や条件がよければ、トレーニング前よりも筋肉は大きく強く変化します。
このような現象は、一般的に「超回復」といわれています。人体は筋トレの負荷刺激によって適度な損傷を受けると、次に同じ負荷刺激を受けた時には、ダメージを受けないように適応する性質を持っているのです。筋力トレーニングによって筋量を増やすためには、このような人体の適応能力をうまく利用することが大切です。
筋損傷は、ウェイトを下す局面で筋肉が伸長性収縮を行うときにおこりやすいことから、筋肥大を目的とした場合には、ウェイトを下す局面の動作を脱力せずに丁寧におこなうことがポイントとなります。
なお、損傷があまりにも著しい場合には、筋繊維が壊死して、アミノ酸に分解して尿として対外に排泄されます。なお、壊死を起こした部位には、10~14日程度の期間で新たな筋繊維の再生が起こる場合ものもあります。